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2017.6.7

神戸市北区に引っ越しました(2)

岩﨑大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)
 

(前回のコラムから続く)

2016年に神戸市北区・鈴蘭台に移住した、神戸R不動産メンバーのストーリー。「山の中に暮らしている」感覚を日常的に堪能しつつ、子育てのこと、空き家の活性化など、楽しく有意義な地域の使い方ができないかと画策中。


陽が入らないほど鬱蒼と木が生い茂る庭を1年かけて整理。森のような庭があるだけで、解き放たれたように子どもたちは遊び始める。
日常と非日常の垣根をなくしたい

仕事とプライベート、さらには日常と非日常の垣根をなくし暮らしたい。そんなことを長年ずっと考えていた僕にとって、神戸市北区、そして今回の家はピッタリだった。

先日、家に息子の友達がたくさん遊びにきてくれたのだが、庭に足を踏み入れると鬼ごっこやボール遊びなどを思い思いに楽しみ出した。うちの庭は木漏れ日の差し込む森のようなフィールド。その中に入ると、気持ち良さから抑えていたものが解き放たれる、子どもたちの様子はそんな感じだった。また、僕ら夫婦は自宅で仕事をすることも多いので、息抜きに庭で過ごせる環境はプラスに働いている。神戸市北区は市街地に比べ、広い庭や山に囲まれた物件も見つけやすいので、ぜひ探してみてほしい。

さらに、夕方幼稚園から帰った後、須磨海水浴場や有馬温泉などへ家族で出かけるようになった。いずれも車や電車で30分圏内なので、旅行や休日にわざわざ出かけるのではなく、平日の合間を縫って日常的に楽しむ場所となった。
神戸市北区には隣り合う市がいくつもあり、市街地に比べ有料道路の渋滞が少ない。また、山あいの幹線道路も比較的スムーズに広範囲へ移動できる。仕事柄動き回ることの多い方は、ベース拠点として北区を考えてみるのもオススメだ。時間的コストが意外と削減できることに気づくだろう。

また、神戸市北区は車必須エリアなので市街地などへ車で出かけた先の駐車場代を当初心配していたが、コインパーキング以外に、自宅のガレージや月極駐車場の空きスペースなどを時間貸しでカード決済などの方法を使いタイムリーに貸し出す“ シェアパーキング ”も最近は増え、それをうまく活用すれば、電車代と比較してガソリン代、駐車場代のトータルが意外と安く収まることに気づいた。

越境入学のできる「神戸市立藍那小学校」

神戸市立藍那小学校。創立明治6年で神戸市内唯一の木造校舎。里山に囲まれた古民家集落の一角に存在する。

神戸市内には、「小規模特認校」と呼ばれる、自然環境に恵まれ特色ある教育を推進している小規模な学校が2校指定されており、ある一定の就学条件を満たす市内在住者なら越境して入学することが可能となっている。そのうちの1校が神戸市北区にある「神戸市立藍那(あいな)小学校」だ。神戸の市街地から電車なら約20分で小学校最寄りの藍那駅へ着けることを考えると、“都会の中の農村小学校”と言っても過言ではない立地だ。うちの家がある鈴蘭台から藍那なら電車で7分。実は、息子も今年の4月から新1年生としてこの小学校に電車で通い始めた。

鈴蘭台駅から三木市方面へたった3駅の藍那エリアには、それこそ“まんが日本昔ばなし”を彷彿とさせるような茅葺き古民家の集落や里山が残っている。小学校には畑があり、農作業を子どもたち自身で行い、少し離れた場所にある田んぼでお米を育て、それを給食で食べる機会もある。また、学校に任せっきりでなく親や地域住民も巻き込み、地域の伝統行事などさまざまな活動を含め学校運営が行われる。

新1年生を例に挙げると、1学年10名程の小規模1クラス。複数の授業科目が他学年の生徒と一緒に行われる。一部の生徒を除き、藍那駅から学校までの道のりは全学年集団登下校で、年次の異なる児童同士が常日頃から交流することとなる。上級生が下級生の面倒をみる、下級生が上級生の姿を見て学ぶといった機会も自ずとある環境だ。

あくまで市立であり、基本的なカリキュラムは他の神戸市立の小学校と何ら変わりないが、どちらかといえば履修科目以外での学びや学校運営のあり方、自活能力を養うカリキュラムに新しい教育の姿を発見し、息子を藍那小学校へ通わせることに決めたのだった。

「エリアを開く」にはどうすれば良いか

こんな場所に!? 奥まった鈴蘭台の住宅街にある、平屋住宅を改装した可愛らしいピザ屋さん。中は天井がぶち抜かれ、開放感のある席になっている。そこから大きな庭が見渡せる。近所の憩いの場の一つ。

空き家が増えている。そして、神戸市北区もその例外ではない。だが実際に見てみると、建物として魅力的な空き家は意外にも多かったりする。それでも空き家は増え続けている。なぜだろうか?

その大きな障壁の一つに、使い方の制約がある。簡単に言うと、「ここにこんなお店があったら絶対楽しいだろうな!」と多くの人が思っても、都市計画法や建築基準法などの法律による制限で、できないケースが多いのだ。

話を神戸市北区に戻す。元は農村が多く、市街化調整区域がメインのエリアだ。そこにニュータウン型の開発が入ってきた経緯がある。農地や住環境はこれからも守り続けなければならないが、そこから派生する暮らしの仕掛けが欠落しているように思うのだ。

たとえば農業が盛んで新鮮で質の良い農作物を身近に手に入れやすい環境があるなら、それらを調理して提供してくれる飲食店や、加工品にして物販として提供してくれる食物販店も併せて近隣に欲しいという方も多いのではないだろうか。あるいは住宅地に暮らしていると、放っておいても安心して子どもを遊ばせられるような、民家を改装したカフェが近所にあってくれたら嬉しいだろう。建物や庭を近所の人たちとシェアするような、街に開かれた存在へと変えていくことで、住宅地の住み心地は格段にアップすると思う。

ところが、現行法の下では制限が多くそれができる場所はずいぶん限られてしまっている。新興住宅地の多い北区は特に、住宅地と商業地の隔たりが大きいように思う。北区で目にする空き家の多くは、法令の見直しがされ、こうしたニーズを解消することにより使い手が見つかるのではないかと考えている。つまり、民家の用途変更を緩和し、商用利用を促すこと。

僕の家でもできる範囲で少しずつそんな実験を始めていくつもりだ。


森のような庭のような、宿のような家のような。まだまだ進化中の自宅。

(第3回に続く)

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このブログについて

山と海に囲まれた街、神戸に移り住み5年。引越魔だった私が神戸に定住できたのは、この街の居心地がとても良いから。 そして神戸で会社を始めたのも、この街に住み続けられる仕事というのが大前提にあったから。居心地のわけをお伝えして参ります。

著者紹介

小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
小泉亜由美(神戸R不動産/Lusie Inc.)
西村周治(神戸R不動産/Lusie Inc.)
岩崎大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)

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